『合同演習を終えて ―連携と信頼関係―』
吉備国際大学 吉田 薫(教育GP補助員)
平成22年3月12日

私が、この教育GPに関わり始めて、そろそろ1年になります。そして、教育GPで最も大事な仕事の1つである「教育GP第2回合同演習」(平成21年度)が、2月4日から6日まで、3日間にわたり行われました。今回の合同演習は、参加学生がこれまでになく多く、準備はかなりの大仕事でした。
しかし、その甲斐あって、3日間の合同演習は、無事終えることができました。準備から実施まで、推進メンバーの先生方とともに、まさに「連携」しながら、進めてきたように思います。各学科での学生の募集、参加学生の取りまとめ、参加日程の把握、同意書の配布と回収、学生への配布シートの内容検討、などなど…。細かな情報のやり取りや連絡を何度も行い、進めてきました。
「連携」に関わる調査などをすると、必ず「情報」、「連絡」、「相談」といった言葉がキーワードとして出てきますが、まさにそれらを駆使して、準備は行われました。普段から、推進メンバーの先生方とは、多くの連絡を取り合っていますが、そこに今回は「学生」という存在が介在することで、より密な「連携」になっていたような気がします。
本GPでテーマとしているのは「医療・福祉領域の連携」で、合同演習では、「老人保健施設」という場において、「利用者(高齢者)」を中心にした、複数の専門職種の連携場面を扱います。合同演習実施の裏では、「大学」という場において、「学生」を中心にした、学科の異なる教員が協働するという、もう1つの連携が行われているように思います。昨年度実施された施設での調査の中でも、「利用者中心に考えるなかで、他職種との連携が可能になり、それが包括的・全人的ケアの実現につながる」という趣旨の回答が見られました。大学でも同様に、「学生中心に考え、学生の学びを促す」ことを念頭に、GP内での連携は行われているように思います。もちろん、学科が異なる教員が協働で1つのプログラムに関わるということは、時間的にも非常に難しいことだと思います。しかし、来年度からは、このプログラムもカリキュラムの中に組み込まれます。今後は、今以上に多くの先生方が関わり、多くの学生に関わることになるでしょう。その際にも、しっかりと「連携」しながら、合同演習に参加する学生にも「連携のよい手本」となるような体制を整えていければと思います。

合同演習で見られたもう1つのキーワードは、「信頼関係」です。最後のまとめのセッションや、それまでの各演習の最後のディスカッションなどで、出てきていた言葉で、連携するには、まずお互いの信頼関係が必要であるといった文脈で見られました。
そこで、私は、「信頼関係」に関わる1つの理論を思い出しました。私の専門は、そもそも心理学で、なかでも社会心理学と健康心理学という分野を中心に学んでいます。その社会心理学の中で(社会学でも取り上げられることも多いですが)有名な「社会的交換理論」です。社会的交換理論とは、人と人の相互作用を、関係から得られる成果を最大化するための行動の交換過程とみなす諸理論の総称で、人や組織の関係を、有形無形の資源のやり取りとみなすものです。
高橋らは、「交換の考えを理解するのに最も良い例は、経済交換である。経済交換とは、労働力を会社に渡し会社側から給料をもらう、あるいは、コンビニで150円払ってジュースを買う、といったものだ。客は150円という「資源」を店に渡し、店から店が持っているジュースという「資源」を得ることで交換が成り立っている。-中略-社会的交換とは、この見方を人間関係や社会関係にまで広げてみようという考え方だ」と説明しています。また、高橋らは、交換が行われるためには、「信頼」という重要な要因がある、とも述べています。ここでいう、信頼とは、相手が協力してくれるだろうという期待を意味しており、その期待にも大きく分けて2つの種類がある。「能力への信頼」と「意図への信頼」という2つであり、この2つの信頼を区別することは組織マネジメントにおいて非常に有効であると述べています。
「連携」は、個人単位だけで行われるものでなく、組織・職場単位として機能するものと言えるのではないかと思います。「情報」という資源を「交換」(やり取り)し、必要な「サポート・援助」という資源を「交換」する、という形として捉えることができると考えられます。
「能力への信頼」とは、相手の資源の価値や量に対する信頼であり、本GPの枠組みで考えると、専門職者の持つそれぞれの専門性であり、スキルであり、知識であると考えられます。「意図への信頼」とは、資源の交換をする相手が、自分に対して資源を渡す気がある、つまり交換への意図があることに対する信頼です。つまり、自分が相手に何か提供したら相手も何かしらのものを返してくれる、と思えることです。どんなにスキルや知識があっても、相手が自分の仕事だけをこなし、手助けしてくれないと思えるような人は、信頼できないということです。
資源の交換であれ、「連携」であれ、やはりその関係は双方向であるべきで、一方が提供するばかり、負担するばかりでは、継続的な関係を築くことは難しいでしょう。先述の調査結果でも見られた、「各職種は対等な関係」、「お互いさま」といった関係性を築きあげていくことが重要であると思います。
能力への信頼、意図への信頼ともに、日頃の関係性の中で形成されていくものだと思います。特に、意図への信頼は、自身の日頃の行動や言葉、態度などを、相手に総合的に判断されているものともいえます。私自身、関わる相手から信頼してもらえるように、心がけていきたいと思います。そして、このGPに関わる人たちと、うまく「連携」できるようになりたいと思います。

最後に、高橋らの引用をもう1つ。「組織力とは、〈個人の力〉と〈個人間のつながり〉との掛け算となる」。連携も、個人の力だけでなく、個人間の関係、結びつき、そして更に、専門性を掛けた総合力・統合力ともいえるものなのではないかと思います。
- 引用文献:
- 『不機嫌な職場:なぜ社員同士で協力できないのか』 高橋克徳・河合太介・永田稔・渡部幹 講談社現代新書 2008年



