リレー随想

他職種連携について

吉備国際大学 子ども福祉学科 加藤 博仁

平成22年6月25日

平井先生から少し赤面するような紹介を受けました加藤です。

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私は、10年前まで産婦人科と小児科の2科からなる病院に20年間、臨床心理士兼医療ソーシャルワーカーとして勤務していました。今回は、その頃の経験から「他職種連携」について考えてみたいと思います。病院は、患者およびその家族に対して、病院という構造と機能をもつシステムによって医療を提供する機関です。そこには、医師や看護師、助産師、保健師、薬剤師、検査技師、理学療法士、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなどの医療に関わる専門職がおり、さらに栄養士や調理師、ボイラー技士、医事課事務職員、さらには当直医、警備員などが配置されています。それぞれの職種が、病院という医療システムの中で自分の役割、業務を遂行します。これらの職種は一つでも欠けると病院としての機能が滞ってしまいます。システムの一部の欠損や変調は、他の部署や病院全体の機能を麻痺させてしまうわけです。このことは、一つの職種から得られる大切な情報が、他の職種に伝達されなかったり、歪められて伝わった場合、誤診や見落としによる患者の被害や損失にもなりうるということです。他の職種にとって必要な情報は、適切な時に正確にその職種に伝達しなければならないのが鉄則です。「他職種連携」における情報伝達や情報の共有は、基本的な事項のように思います。

外来や入院中の患者や家族から標榜する診療科目以外の訴えがあったり、医療者などが潜在的ニーズを発見した場合、まずは医師や看護師などが情報提供や説明などによって問題解決への対応を行います。しかし、心理や福祉に関わる問題がある場合には、心理職や福祉職に援助活動が依頼されます。通常、込み入った問題がある場合です。たとえば、婦人科領域であれば疾病と同時に心身症や精神症状がある場合、産科領域では望まない妊娠への対応や産後のマタニティーブルーズの心理的ケア、出産費用や産後の生活費などの問題があり、小児科領域では子どもの病気に付随する学校や施設への関わりの問題、育児不安、子どもの不適応行動、障害受容などの問題があります。これらの問題は、病院としてきめ細かいサービスを提供する上で大切な援助となります。病院に心理職や福祉職が配置されているからこそできるサービスです。

通常、心理職や福祉職は、医師や看護師からその必要があって連絡が入ります。そして、ナースステーションや診察室などで、カルテを見ながらの治療方針や状態像、問題点、期待する援助内容などについて説明を受けます。そして患者の紹介を受け、患者本人や家族に面接することになります。問題によって、カウンセリングかケースワークかの面接を行います。カウンセリングであれば、患者の状態像を面接での様子や心理テストからアセスメントし、その対応方法について依頼してきた医療専門職にコンサルテーションすることになりますし、心理相談を引き受けることになります。ケースワークであれば、生活状況や家族関係、退院後の希望などについて、患者や家族、医療関係者などから情報を収集し、アセスメントとプランニングの上で、医療専門職や医事課職員に必要な情報の提供と対応策についてフィードバックしていきます。心理職や福祉職が面接によって患者や家族から得る情報は、医療行為に必要でないものを多く含みますから、それぞれの医療専門職に情報提供するのは、その専門職に必要と考えられる情報に限られてきます。それでもある程度の患者のニーズや状態、状況の伝達は、患者の治療を適切なものにするためにも、入院生活のアメニティを高めるためにも必要です。「連携」において情報を共有することの大切さと同時に、プライバシーの保護も大切な課題です。

患者に関わる専門職は、疾病の治癒や治療のための入院生活の継続、無事の退院などの目標を共有し、医療システムの一部としてそれぞれの役割を担い、他職種に必要な情報を互いに適切に提供し、患者の治療や援助が円滑に進むように配慮していくことになります。治療や看護に関しては医師や看護師が主体となって治療や援助を進めるわけですが、心理的な問題では心理職が、生活問題に関しては福祉職がイニシアチブをとり、ケースマネジメントの役割を担うことも多くなります。チームやネットワークでの援助では、複数の職種が関与するため、援助の全体像や患者の変化を観察しているケースマネジャーの役割をいずれかの専門職がとることになります。福祉職がイニシアチブをとる場面も決して少なくありません。とりわけ福祉職は、病院内の連携だけでなく、地域の機関、施設、団体等との連携プレイも大切な業務となってきますから、患者や家族の利益を損なうことのないように、それぞれの援助活動が効率よく機能するようにケース全体の進展を監視、観察する必要があります。院内の連携だけでなく、地域社会のソーシャルサポートネットワークとしての連携も重要な課題になってきます。病院から在宅あるいは地域社会につなぐことであり、地域社会の中で患者や家族を支えていく援助活動にも参画していくことになります。

文章が長くなってしまいましたので、そろそろ終わりにしたいと思います。最後に、「他職種連携」として情報を提供し合うためには、自分が他の専門職の役割や業務内容を知ることが必要です。また、自分が専門職として他の職種の人たちから信頼されている必要があります。そのために、正しい倫理観や効果的な援助を行う技能、業務遂行能力、専門職として恥ずかしくない知識をしっかりと身につけておくことが大切だと思います。

それでは、次回のリレー随筆を松原先生にお渡ししたいと思います。松原先生よろしくお願いいたします。

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