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【経営社会学科】【大西ゼミ】 「疑う力」と「新しい仲間」 西尾くん、西粟倉での10日間をふり返る
- 経営社会学科
経営社会学科3年の西尾友伸くんが、JICA中国主催「西粟倉村フィールドワーク合宿」(8月20日〜29日、9泊10日)をやり遂げました。先日の記事では、大西が現地を訪ねた様子をお伝えしました。今回はその続編です。
合宿を終えた西尾くんは、自分の成長を2つの言葉でまとめています。「疑問に思う力」と「新たな場所で新たな仲間と出会う楽しみ」です。本記事では、西尾くん自身のふり返りと写真をもとに10日間を紹介します。あわせて、その成長を「グリット」「エフェクチュエーション」「越境学習」の3つの視点から少しだけ読み解きます。
10日間のあゆみ
合宿のゴールは、村の子どもたちに向けた授業をつくることです。テーマは「世界に通じる西粟倉村の魅力」。受入団体の一般社団法人Nest様のもと、全国から集まった6名の学生が、村を歩き、人に会い、話を聞き、それを授業に編み上げていきました。
村を知る 森と、ローカルベンチャー
前半は村を知る時間です。初日は「心が動いた瞬間」を写真に撮るミッションで村を歩きました。2日目は「百年の森林構想」の講話を聞き、林業の現場を見学。役場ではローカルベンチャーの話も聞きました。西尾くんのノートには、合併を選ばなかった村の歴史や、森林率93%という数字がびっしり書き込まれています。
人に聞く インタビューと対話
3日目からはインタビューに出かけました。この日は大西も現地を訪問し、Nest代表の福岡さんのご厚意で、学生たちとの対話の時間をいただきました。ゼミで取り組んできた「インタビューを学ぶ」授業の実践編です。その後も学生たちは、福祉の現場や村の事業者を自分たちで訪ね、話を聞いていきました。
考え抜く 仮説を立て、授業の「軸」を決める
中盤からは、小学生チームと中学生チームに分かれて授業づくりに入ります。ホワイトボードには、夏祭りで出会った子どもたちの印象と、そこから立てた仮説が並びました。「子どもたちは村の魅力に気づいていないが、村のことは好きなのではないか」。
さらに、授業の「理想」と「最低ライン」を書き分けました。理想は「子どもたちがこの村をより好きになってくれる」こと。最低ラインは「誰か1人でも新しい学びがある」こと。高い目標と、必ず守る土台を分けて考えています。
ともに暮らす 自炊の食卓と夜の語らい
10日間、食事は自炊です。たこ焼き、豚キムチ、キーマカレー。一緒につくって食べる時間が、チームをつくっていきました。7日目には2回のデモ授業に挑み、うまくいかなかった悔しさを、その夜のうちに改善へとつなげています。
西尾くんのふり返り
合宿後、西尾くんは自分の言葉で学びをまとめています。一部を紹介します。
成長① 「疑問に思う力」
小学生を対象にした授業というプレッシャーの中、アイデアの採用とボツを幾度となく繰り返すうちに、「本当にこのボツの理由には妥当性があるのか?」と深く考えるようになりました。その結果、スタッフの方と意見を交わしたり、納得がいくまで食い下がったりするようになっていきました(もちろん、すべて的確な理由でボツにされたため、覆すことは一度もできませんでしたが笑)。 このプロセスを通じて「疑う力」が磨かれ、ただ受け身で聞くのではなく、物事の本質や粗に気づく視点が養われたと感じています。
― 西尾友伸
成長② 「新たな場所で新たな仲間と出会う楽しみ」
以前までの私は、知っている仲間と行動するのが好きで、知らない場所や人に対しては正直抵抗を感じるタイプでした。しかし、このフィールドワークで育った環境も年齢も全く異なる仲間と過ごす中で、自分にはなかった考え方や知識に触れることができました。 自分の中の常識だけでは解決できない壁に直面してもチームで乗り越えられたり、逆に自分の力が誰かの役に立ったりする経験を重ね、9泊10日の終わりには「このメンバーと別れたくない」と心から思えるほどの絆が生まれました。
― 西尾友伸
自分の殻を破り、大きく成長させてくれたこの経験を糧に、これからも色々なことに臆せず挑戦し続けていきたいと思います。
― 西尾友伸
3つの視点で読む、西尾くんの成長
西尾くんのふり返りには、ゼミで扱ってきた考え方がよく表れています。3つだけ、短く解説します。
① グリット ― 食い下がり、やり直す力
グリット(Grit)は、心理学者アンジェラ・ダックワースが提唱した概念です。長期的な目標に向けた「情熱」と「粘り強さ」を指します。才能よりも、あきらめずに続ける力が成果を左右するという考え方です。
西尾くんは、何度ボツにされても案を出し直し、納得できるまでスタッフに食い下がりました。デモ授業で悔しい思いをした夜も、すぐに手直しを始めています。結果として一度も覆せなかったことより、最後まで向き合い続けたことに意味があります。東京のプログラムから休む間もなく続いた日程を、走り切ったこと自体もその表れです。
② エフェクチュエーション ― 「最低ライン」を決めて、まず動く
エフェクチュエーションは、経営学者サラス・サラスバシーが熟達した起業家の研究から見出した思考法です。未来を正確に予測するより、手持ちの資源から動き出し、関わる人と一緒に形をつくっていきます。
ホワイトボードに書かれた「理想」と「最低ライン」は、その考え方に通じます。「ここまでは必ず守る」という線を先に引けば、あとは安心して試せます。これが「許容可能な損失」の原則です。未完成のままデモ授業に挑み、失敗を改善の材料にしたのは「レモネードの原則」。そして、スタッフや仲間と意見をぶつけ合いながら授業の中身を決めていった過程は、関わる人と目的を共につくる「クレイジーキルトの原則」そのものです。
③ 越境学習 ― 慣れた場所を出て、自分の「当たり前」を問い直すく
越境学習は、ふだん属する場(ホーム)を離れ、異なる場(アウェイ)に身を置いて学ぶことです。慣れない環境で生まれる戸惑いや違和感が、自分の前提を見直すきっかけになります。く
西尾くんの2つの成長は、まさに越境の成果です。知らない場所や人に抵抗があった自分が、環境も年齢も違う仲間と暮らし、「自分の中の常識だけでは解決できない壁」にぶつかりました。「疑問に思う力」も、自分の常識が通用しない場で、言われたことを一度自分で噛み砕く習慣から生まれています。越境学習で大切なのは、その経験をホームに持ち帰ることです。後期のゼミで、西尾くんの学びを仲間と分かち合っていきます。
おわりに
東京で2日、西粟倉で10日。夏休みの大半を学外の現場で過ごした西尾くんは、「疑う力」と「新しい仲間と出会う楽しみ」を持ち帰ってきました。これまで関わったことのない場所へ飛び込みたい。そう語る西尾くんの次の挑戦を、ゼミとして応援していきます。
受け入れてくださった一般社団法人Nestの皆さま、JICA中国の皆さま、そして西粟倉村の皆さまに、心より感謝申し上げます。




