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【経営社会学科】【地域連携】孤立しない子育てを、まちの力で ―森祐美子氏を迎え、公開講演会「地域の居場所づくりをまちなかで考える」を開催しました―
- 経営社会学科
2026年10月2日(金)、吉備国際大学 社会科学部 経営社会学科は、高梁栄町商店街のコミュニティスペース「まちのリビング ニューエスカ」で、公開講演会「地域の居場所づくりをまちなかで考える」を開催しました。講師は、認定特定非営利活動法人こまちぷらす理事長の森 祐美子(もり ゆみこ)氏です。演題は「地域の居場所づくりとコミュニティカフェの実践 ― 横浜『こまちぷらす』の活動から学ぶ ―」。横浜での実践をもとに、コミュニティカフェを核とした居場所づくりについてお話しいただきました。地域で活動する市民、行政・教育・福祉の関係者、本学教員及び学生など12名が参加し、講演のあとも活発に意見を交わしました。
空き店舗が「まちのリビング」に変わるまで
講演に先立ち、高梁市学校魅力化コーディネーターの横山 弘毅氏から「ニューエスカ」の紹介がありました。ニューエスカは、約10年間空き家だった元ショッピングセンターを、地域住民や高校生・中学生とともに改修してよみがえらせた場所です。電気工事は高校の電気科の生徒が、看板づくりは美術部の中学生が担うなど、若い世代が改修の過程に主体的にかかわりました。いまではコワーキング、学び、イベント、交流など多目的に使われ、月に100〜200人が訪れる拠点に成長しています。
続いて、参加者が順番に自己紹介を行いました。教育、福祉、行政、ゲーム開発、そして一般の市民と、立場はさまざまです。それでも「地域の居場所づくり」という共通のテーマで、ひとつの輪ができました。また本学社会科学部経営社会学科教授の黒宮亜希子学科長も参加しました。
「参加できる場」が、孤立をほどく ― 森氏の実践
こまちぷらすは、「子育てをまちでプラスに」を掲げ、2012年に横浜市戸塚区で森氏が仲間とともに始めた団体です。現在は約45人のスタッフと400人を超える登録ボランティアが活動し、2025年にはこども家庭庁の第3回「未来をつくる こどもまんなかアワード」で内閣総理大臣表彰を受賞しました。
森氏の活動の原点には、自身の子育て経験があります。第一子の出産後、誰とも話せず追い詰められた経験から、森氏は「ただ支えられる」のではなく「参加できる」場があることの大切さを確信したといいます。学生時代に新潟のまちおこしで1日限定のカフェを運営し、「共につくる」過程からコミュニティが生まれることを実感した経験も、現在の活動につながっています。
こまちカフェの工夫
▶見守りスタッフが常駐し、親が温かい食事をとりながら「頼る練習」ができる。
▶卵・乳製品・小麦・肉を使わないメニューを用意し、アレルギーの有無にかかわらず誰もが同じメニューを選べる。
▶「恩送りカード」と共有冷蔵庫で、経済的に困難を抱える人も静かに利用できる仕組みをつくる。
▶商店街と連携し、感覚過敏の子どもが少しずつ散髪に慣れられるよう、美容師が工夫してくれる。
もうひとつの柱が、出産を地域全体で祝う「ウェルカムベビープロジェクト」です。出産届の提出時に申し込んだ家庭へ、約1か月後、絵本や育児用品に加えて、高齢者を含む地域の人たちが手づくりしたお守りと手書きのメッセージを届けます。関わる人は約50人。物を届けること以上に、まち全体で子育てを歓迎する空気をつくることが狙いだと紹介されました。
商店街と、子どもの「好き」とともに
対話では、商店街との連携も話題になりました。森氏が拠点とする商店街では、「子ども・高齢者・障害のある人が、誇りと居場所と出番を感じられる地域」というビジョンを商店会全体でつくったことで、会費への不満が協働への意欲に変わり、バリアフリー研修や特別支援学校との連携、子どもが主役のまちイベントへと活動が広がったそうです。「父親がおむつ1枚を街中で買えない」という声から生まれた「おむつ自販機」も、当事者のニーズと企業の技術をつなぐ中間支援の例として紹介されました。
教育のあり方にも話が及びました。知識を詰め込むのではなく、子どもが「何を吸収したいか」を自分で見つけられるようにする。そのために必要なのが、空間・人・時間の三つだといいます。学校の外で多様な大人と出会う機会が、子どもの興味や関心を引き出し、内発的な動機を育てるという指摘がありました。
「足し算」だけでなく「引き算」の支援を ― 豊かに揺らぐ運営
後半の議論の中心は、場を長く続けるための運営の哲学でした。森氏は、「良かれと思う支援が、かえって相手の力を奪うことがある」と指摘します。スタッフ全員でつくった行動指針(クレド)のもとで、「雑談の場であり続ける」ことを大切にし、支援は足し算だけでなく引き算も必要だと語りました。マニュアルやルールを決め込まず、迷ったときは関係者で語り合って判断する。そうして「豊かに揺らぐ」運営を続けています。
また、場づくりに単一の必勝法はなく、「なぜ始めたのか」という原点に立ち返りながら、うまくいかなければ次を試し続けることが大切だとも語られました。こまちぷらすでは、全員が2030年に向けたビジョンの絵を描き、それぞれのやりたいことを組織の方向性と重ねることで、メンバーが自分ごととして関わる仕組みをつくっています。
司会を務めた佐野教授からは、コロナ禍でも続いた居場所の共通点として、次の3点を補足しました。
▶当事者性が強く、場がメンバー自身にとっての生きがいになっていること
▶ルールを決め込みすぎず、話し合い続ける文化があること
▶計画どおりにいかないことを肯定できる柔軟性(アダプティブ・マネジメント)があること
参加者から聞かれた声
質疑・意見交流では、立場に応じた学びが語られました(要旨)。
▶行政・福祉の現場で、居場所づくりの考え方をどう実務に落とし込むかを考えたい。
▶クレドの考え方を、学校などの教育現場でも応用できないか。
▶婚活事業と居場所づくりを掛け合わせると、新しい相乗効果が生まれるのではないか。
運営を支えた学生の声 ― 「子どもを見る目が変わる」
本講演会の運営サポートを行なった北原太一さん(本学経営社会学科4年)は、ふだんから大学のボランティアセンター活動に熱心に取り組んでいますが、こうした講演会の運営に関わるのは初めてだったといいます。講演会を終えて、以下の感想を語ってくれました。
▶講演会の運営に関われたことは貴重な経験でした。講師のお話は、地域づくりにとって大切なことばかりで、とても学びになり、楽しかったです。
▶大学生がメッセージを書いて、出産したお母さんに届ける活動があります。そこに大学生が関わることで、子どもたちを見る目が変わっていくというお話が、大学生として強く印象に残りました。自分もこれから子どもと関わる機会が増える世代なので、そうした視点を養えるのは、この活動のよいところだと思います。
▶子育てを親が一人で抱え込まず、地域全体であたたかく見守る場をつくるという場づくりは、地域づくりの面でもとてもよいことだと思いました。その入り口として、カフェという「装置」があるというお話も新鮮でした。カフェは飲食店というイメージでしたが、コミュニティの場づくりにも力を発揮することを知りました。
▶ふだんボランティアをしていて、関心のない学生をどう引き込むか悩んでいました。しっかり会話をするなど、今日はいろいろな形を示していただいたので、何かしら役に立つと思います。
まちなかで学び、地域とともに考える
今回の講演会では、居場所づくりが、子育て支援にとどまらず、高齢者の生きがいづくり、男性の地域参加、学校教育、商店街の活性化、さらには婚活まで、多くの分野に広がる可能性をもっていることが浮かび上がりました。高梁にも、空き店舗を活用した「ニューエスカ」のように、地域の人々が手をかけて育てる場所があります。講演会をきっかけに、地域で活動する方々と本学学生が顔を合わせ、これからの居場所づくりを一緒に考える機会となりました。
ご講演くださった森祐美子氏、会場をご提供いただいたニューエスカのみなさま、ご参加いただいた地域のみなさまに、心より感謝申し上げます。経営社会学科では今後も、学生が地域に出て学び、地域の方々とともに未来をつくる機会づくりを進めてまいります。
(※参加者の氏名および写真の掲載については、本人の同意を得ております。)
【関連リンク】
・経営社会学科 https://kiui.jp/gakka/keiei/index
・地域連携 https://kiui.jp/outline/#bge-03
・まちのリビング「ニューエスカ」 https://newesca.com/
・認定特定非営利活動法人こまちぷらす https://comachiplus.org/
・森 祐美子氏 代表者プロフィール・略歴(こまちぷらす) https://comachiplus.org/mori_profile/




